“フォーリー”という効果音制作手法をご存じでしょうか?
フォーリーとは、映像を見ながら小道具を使って効果音を作る(演技する)手法です。
ジャック・フォーリーという方がこの手法を編み出し、「フォーリーさんが音を作る部屋」
ということから”フォーリースタジオ”(フォーリーステージ)という名が定着したそうです。
最近ではフォーリーによる効果音収録の様子をテレビで特集が組まれていたり、
ゲーム制作会社も自社にフォーリー用の部屋を設けるなど、どんどん手法が一般化しています。
今日は先日お邪魔させて頂いた(株)こだまプロダクション様のフォーリースタジオ見学の様子をレポートさせて頂きます。
※2020 年 1 月 21 日現在 プレオープンの状態を見学させて頂きました。これからさらに制作環境を充実されていかれるとのこと!
私、小川はフォーリースタジオの見学が初めてだったこともあり、かなり興奮。(笑)
まず目に入ったのはやはり足音を録音するための床素材。
サラッとした砂、少し砂利を含んだ砂、枯れ葉、など必要な床素材ごとに木箱で区切られていました。
木箱は分厚めの木材でしっかり丁寧に作られていて、写真からも分かるようにそれぞれ寸法がキッチリ揃っています。
足音は外で録音することもできますが、車や人の声、施設から流れる音楽、雑踏など
周囲のノイズが多くてクリーンな足音を録るのは難しいです。
室内イメージを想定した足音であれば、部屋の中で録音することもできますが、
砂利や草むら、森、岩、など外をイメージした足音は常にノイズと隣り合わせになります。
そうしたノイズを避けるために、深夜に外に出かけて足音を録音していたこともあるというお話を聞いて、私も大変共感しました。
フォーリースタジオであればこうしたノイズに悩まされることなくクリーンな足音が録れるだけでなく、
人目を気にせずダイナミックな動作ができるのも大きなメリットですよね。
こちらは先ほどより少し大きめの床素材。
このまま足音を録れば接地面が木の床の足音が録れますが、
ここに別の床素材パネルを乗せて取り換えることで柔軟に録りたい床素材を変えることができるようです。
また、ひっくり返すことで入れ物としても利用でき、水や汚れものなどの液体に関する音を録音する用途にも使えるとのこと。
しかも、液体が漏れないよう、内側のスキマを埋める工夫もされていました。スゴイ・・。
また、部屋の床はコンクリートのままになっていて、
ここでそのまま足音を録るのも良し、 先ほどの砂や枯れ葉を撒いて足音を録るのも良しで
様々な足音を静かな部屋で録れる環境は羨ましい!
コンクリート床も用途によって使い分けられるようにこれから手を加えられるそうです。
部屋の左奥には貯水できそうなスペースが見えます。
ここのスペースはやはり水に関する音を録音するために使われる予定だそう。
排水は部屋の床中央部から排水可能で水の入れ替えも心配ないとのことです。
私も経験がありますが水に関する音は録音が難しく、
お風呂場で録音しても部屋の響きが邪魔をしてしまい、欲しい音が録れません。また、浴槽の材質も大きく響き方に影響します。
例えば、一般的な樹脂素材やステンレス製の浴槽ではダイナミックな水かきをすると
「ボコン」とした余計な共鳴が起こってしまいます。
プールを設置して録音することもできますが、
広いスペースが必要な上、後処理や水びたしになることを考えると個人が室内で録音するのはとても勇気がいります。(笑)
こうした設備があれば部屋、材質の響きに影響されず、外のノイズも極力抑えることができますのでクリーンな録音が可能ですよね。
マイクはゼンハイザーの MKH‑416 が設置されていました。
基本的にはガンマイクで対応されるそうですが、対象によってはAKGのコンデンサーマイクC414を使われるそうです。
音量が極端に小さい繊細な音などはラージダイアフラム コンデンサーマイクが向いているとのこと。
2020 年 1 月 21 日現在では、マイクは同室内にあるマイクプリアンプ、オーディオインターフェイスにつながっており、
ブース内で収録操作を行えるようになっていました。
コンピューター本体はノイズを避けるために別室に設置されていて、
木製ケース状の構造物に入れられるという工夫もされています!
この方法だとコンピューターのノイズを避けつつ、
オペレーターがいなくても一人で演技から収録操作まで行えるメリットがあります。
また、フォーリーでは砂埃や粉塵が発生することも常にあることから、
そうしたものから守る意味でもコンピューター本体を別室にするのは効果的ですよね。工夫がスゴイ・・!
フォーリーの収録では一般的なレコーディングスタジオとは違って、
収録の演技と録音操作を一人で兼任するケースも多々あります。
そういうケースでは、演技を行う場所と PC 操作を行う場所はなるべく同室にあるほうが効率的ですよね。
しかし近づけすぎると PC の電源ファンや HDD の回転音が入ってしまう。
こうした悩みをうまく工夫で解決されていると感じました。
また、現状ではあくまで収録をメインに行い、
編集については別室のスタジオでされるそうなので、今後収録環境が変化する可能性もあるようです。
フォーリースタジオに行くまでの廊下には小道具がビッシリ!
金物・おもちゃ・靴・電話・木製の小物・食器などなど写真では映りきっていないものもたくさんありました。
すべての小物はケースでジャンルごとに整頓されていて目的の小物をすぐに取り出せるようになっていました。
私も見習わなくては・・。
私も効果音制作のために小物や金物を集めていますが、この物量はスゴイ・・!
ここではお見せできませんが、お気に入りのフォーリー小道具も見せて頂いて、
なるほど!と唸るようなものがあって大変勉強になりました。
以上、(株)こだまプロダクション様のフォーリースタジオのレポートをお伝えしました。
実はこの後、別室のスタジオにお邪魔させて頂いて楽しく談話させて頂いたのですが、
機材の知識量や音、録音に対する工夫、経験量などが凄まじく、刺激を受けっぱなしの見学となりました。
本当にありがとうございます!
私もこの日の見学で頂いた刺激を日々の効果音制作に活かせるように取り組んでいきたいと思います。
※今回のレポートは 2020 年 1 月 21 日現在のご様子をレポートしたもので、
さらに制作環境を整えていかれるとのことなので引き続き、(株)こだまプロダクション様のフォーリースタジオに注目です!
(株)こだまプロダクション様の詳細はこちら!
株式会社こだまプロダクション
Codama Production Inc.
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